時代は、浪曲という芸に接する機会をほぼ失くしてしまった。
ただ、そんな中「国本武春」だけが、今の時代と浪曲との接点を探し求めていた気がする。
巧みにバンジョーを鳴らし、ウエスタン調に浪曲を唸ったり、
十八番の「忠臣蔵」の熱演は、観る者を惹きつけていた。
10年前のパルコ劇場で、人に勧められ拝見した彼の独演会は、
まさに度肝を抜かれる体験をした。
その活躍も、結局は病魔に打ち勝てず、志半ばでの旅立ちとなってしまったことは、
浪曲界だけでなく、日本の芸能文化にとっての損失と言えるだろう・・・。
だれも真似のできない芸当なので、後を継ぐ者もいないだろうが、
「国本武春」の残した浪曲師としての芸は、胸に焼きついたままである。