高三から浪人生活を経て、20歳で上京するまでの最も多感な時期に、
ノンフィクション作家「沢木耕太郎」に出会った。
初期の一連の作品「一瞬の夏」「敗れざる者たち」「若き実力者たち」から「深夜特急」に至るまでは、
夢中になって何度も読み込んだ。
その後はなぜか、最後まで読むことができない作品が多く、最近では手にする機会さえなかったのだが、
久しぶりに、沢木氏の父親の最期を看取った様子を描いた「無名」を読んだ。
私自身8月に看取った父のことを思いながら、沢木氏独特のリズムと、淡々とした描写は、妙に懐かしかった。
話は「無名」の人生を送りながら、父親の思い出をたどりながら、
父親の書き留めた俳句の句集を、近親者に贈ることで締めくくられる。
82歳で亡くなった私の父の「無名」の生涯について、ゆっくり思い出すきっかけとなった。